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犬猫の転落事故
犬猫の転落事故

夏ですね。

この一言しか出てこないほど、夏ですね。

これは外に出たら命が危ない、と真剣に思うほどの気温と日差しに慄いております。

盛夏最中ですが、熱中症はさすがにおさまってきました。

これはもう当たり前のようにエアコンをつけて生活してらっしゃる飼い主さんが増加したためだと思います。

いえ、今つけていなかったら人が死んでしまうレベルですので、当然と言えば当然。

やはりエアコンをつける、つけないが個人の体感に作用される時期のほうが、基本的に室内で過ごす動物たちにとっては熱中症のリスクが高いと考えられます。

真夏にエアコンをつけること、散歩を避けること、水分補給に気を配ることも、常識的行動になってきてくれたおかげですね。

人の熱中症はこれからも増え続ける恐れがあり、それは屋外活動を行わざるえない人だからこそ、というのがあると思いますが、動物たちの熱中症対策については、来年以降もゴールデンウィークあたりから、警鐘を無らし続けようと思います。

早期の注意喚起、大切。

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さて、注意喚起として取り上げたいことがもうひとつ。

先月から2件、転落による事故が起きています。

一件は7階からの猫の転落、もう一件は10階からの犬の転落です。

どちらも残念なことに亡くなりました。

猫ちゃんの方はベランダから、わんちゃんの方はおそらくマンション共用の廊下からと考えられます。

両方のケースで飼い主さんが落下する瞬間を見ておらず、まさか転落するとは考えてもいませんでした。

しかし、事故は起き、どちらも亡くなってしまいました。

ほんのちょっと目を離した瞬間、これくらいなら大丈夫、いつもしているから平気なはず、まさか落ちることはない、そう思うほんの少しの隙をついて、事故は発生したのです。

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皆さんは転落による肉体の損傷がどれほどのものかわかりますか?

運ばれてきた二匹はともに、

肺出血、気胸、内臓破裂、肝臓損傷、その他多数の外傷により、外傷性ショックを起こしていました。

交通事故でも同じ事が起きますが、高所からの転落はさらに酷いものになります。

まさに目も当てられないほどです。

皆さんの中には、「猫は割と高所から落ちても大丈夫」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

これは確かにその通りで、4,5階から転落した猫が即死したのに、7,8階から落ちた猫が骨折で助かった、という話もあります。

猫の体が全体に柔らかく、回転しながら受け身を取る習性があるため、落下距離がとれると足から接地し、結果的に四肢の骨折で済むことがあるのです。

ですが、これは健常で受け身の取れる猫の話。

今回落ちた猫は全く目が見えない子でした。

受け身も取れず、そのまま体ごとたたきつけられたのだと思います。

これはシニアの猫や子猫でも同じくリスクがあり、若く元気な猫だって高いところから落ちて助かる確率なんて些末なものです。

落ちない方が良いに決まっています。

猫をベランダに出してお散歩されている方が実は多いことを今回のことで知ったのですが、

絶対にやめていただきたいです。

「うちの子外に出さないから気分転換しないと」

「見張ってるから大事よ」

「いままでも大丈夫だったし」

「そうは言っても、出たがるのよね」

という意見を聞きました。 

今回の猫ちゃんもこれが初めてのベランダではなかったのです。

何度目か分からない、気分転換で落ちて亡くなったのです。

自分のところの子だけは平気だという、根拠のない自信は全く意味がありません。

高所で暮らすための最低限のルールだと思って、絶対に出さないようにしてください。

出したら落ちて死ぬかもしれない、それでもいいと考える方は、いらっしゃらないと思うのです。

ベランダを箱型に改造して、全く外に出られないサンルームのようにしている、犬が大型で明らかに隙間から降りられないし、足場もない、飛び越えられる高さではない、などの特殊環境でない限り、猫も犬もベランダに出すべきではありません。

よく幼児のマンションからの転落事故が起こりますが、これは根本的なところが同じだと思います。

うちは、大丈夫という意識が、その子の命を奪うのです。

hr

もう一件の方は、郵便が届いてドアを開けた隙間から、室内にいたワンちゃんが廊下に飛び出してしまったことから起こった事故でした。

犬の飛び出しによる事故は、実は多いのです。

これはマンションに限らず、戸建てのお家でも、あっと思った瞬間に犬が目の前の道路に飛び出し、運悪く走ってきた車に跳ねられてしまった、という悲劇は珍しくありません。

よって基本的には扉の前にドッグガードなどを設置し、二重扉にすることで飛び出し防止を図る必要があります。

これも赤ちゃんがいたりすればベビーガードを使ったりするのと同じですね。

また、ペット可のマンションの共用部の使い方は、そのマンションごとに異なると思いますが、人気がないからといって、ノーリードで遊ばせていいというところは少ないかと思います。

1階部分にドッグラン的な場所がある、などのこちらも特殊な場合を除き、基本的には首輪とリードを装着するか、ケージなどにいれての異動を義務付けられていると思います。

今回のわんちゃんはノーリードのまま、廊下でお散歩をすることがあったそうです。

犬たちはかしこく、一度した楽しい経験を忘れません。

きっと、わんちゃん自身はいつものお散歩のつもりで、ウキウキと飛び出していったのだろうとおもいます。

そして飼い主さんの目の届かないところで、なんらかの形で落下してしまったのでしょう。

二度と帰れないなんて思っていなかったはずです。

首輪とリードをつけて外出する習慣が身についていたら、そもそも外に出ることもなかったかもしれません。

ドッグガードがあったら、飛び出さなかったでしょう。

もしくはインターフォンが鳴ったら犬をケージにもどす癖を付けていたら、部屋の扉を閉めてから外の扉を開けるようにしていたら、すり抜けて出てしまうこと自体がなかったはずです。

たくさんのイフには意味がなく、事故は起きてしまいました。

どれもほんのちょっとした油断と隙だった。でも絶対に取り戻せないミスです。

後悔は決して先に立たず、事故の悲しみは永遠に心に刻まれて苦しむことになります。

どれだけ涙を流しても、失った子たちは帰ってきません。

こんな形でお別れをすることになるなんて、誰も考えていなかった、でも恐ろしく残酷な別れ方をするのが、事故なのです。

hr

どうか今一度、基本に戻って考えていただきたいのです。

万が一が起きるかもしれない、という視点に立っていまの生活習慣を見直してみてください。

首輪が少し緩いかも?散歩中にぬけたら迷子になったり、車にひかれるかもしれない。

車のなかで自由にさせてるけど、でも急ブレーキかけたり、他の車の事故に巻き込まれたら、どうなってしまうの?

ノーリードでお散歩できるようにしつけてある、でも何かしらのハプニングかおきて、犬がパニックになってしまったら?

考えたらいくらでも出てくるものだと思うのです。

うちの子はきっと大丈夫、という正常性バイアスに惑わされていませんか?

ほんの少しの油断と隙、それが永遠に消えない傷になります。

その傷は癒えることはなく、自分をずっと苦しめ続けます。

素晴らしい動物たちの思い出はすべて、自らを責める呪詛に変わるのです。

ああしなければ、こうしなければ、自分のせいで。

そう泣き崩れる飼い主さん達を前に、我々は掛ける言葉を失ってきました。

油断をしないでください。

隙を見せないでください。

最悪の想定をしながら、その予防と防止に努めてください。

いままで大丈夫だったのは、ただのラッキーなのです。

どうかこれ以上、飼い主さん達が傷を負わないようにすごしていただきたい、心から切に祈ります。

2025-07-31

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